チェスの神童 その4 IM Vincent Keymerの2018年

  IM Vincent Keymerは2004年11月ドイツ生まれ。2018年1月時点では13歳でFIDEレート2408でした。

 

  Vincent Keymerの1年間の戦績をまとめた表がこちらです。

大会名 参加者数 シード順 持ち時間 形式 ゲーム数 Win Draw Lose TPR 順位 開催地
Open de Vandoeuvre 102   Classical オープン 9 4 3 2 2482 18 フランス
Gibraltar Masters 276 126 Classical オープン 10 4 1 5 2270 175 英領ジブラルタル
Bundesliga(Rd.9,10)     Classical 団体 2 1 0 1 2433   ドイツ
Bundesliga(Rd.11,12)     Classical 団体 2 0 2 0 2433   ドイツ
GRENKE Open A 787 99 Classical オープン 9 7 2 0   1 ドイツ
Bundesliga(Rd.13,14,15)     Classical 団体 3 1 2 0 2433   ドイツ
Lasker Memorial Blitz 285 93 Blitz オープン 16 10 3 3 2536 20 ドイツ
Bamberg Open 125 9 Classical オープン 7 4 3 0 2596 3 ドイツ
Bamberg Blitz 30 3 Blitz オープン 11 10 0 1 2480 2 ドイツ
European Youth Team     Classical 団体 7 4 2 1 2530   ドイツ
Xtracon Open 397 31 Classical オープン 10 6 3 1 2590 10 デンマーク
Sants Open 422 26 Classical オープン 10 6 2 2 2461 34 スペイン
Isle of Man 165 72 Classical オープン 9 4 2 3 2575 64 イギリス
Bundesliga(Rd.1,2)     Classical 団体 2 1 0 1     ドイツ
Bundesliga(Rd.3,4)     Classical 団体 2 1 1 7     ドイツ
Sunway Stiges   29 Classical オープン 10 5 2 3 2453 35

スペイン

 

・「シード順」は大会参加選手をレーティング順に並べた際、上から数えた順位です。
・持ち時間の「Classical」は長時間のゲーム、「Rapid」、「Blitz」は早指しにあたります。国際チェス連盟(FIDE)はこの三種類のレーティングを別々に計算しています。
・「TPR」はトーナメント・パフォーマンス・レーティングの略で、チェス選手の大会成績を示す指標です。

 

 1.神童は忙しい

  同年代のトッププレーヤーの一人であるKeymerは、2018年の一年間を通じてClassicalのゲームを92ゲーム戦いました。Classicalのゲームは概ね1日1ゲームですから、1年のうち3ヶ月は「チェスの試合の日」ということになります。

  この年代のトップレベルのプレーヤーには、殆ど学校に通わず事実上プロ選手として活動するプレーヤーもいますが、Keymerは、学校とチェス選手の活動を両立しているそうです。*1

  学業にチェスに、神童Keymerは忙しい日々を過ごしているようです。

 

2.大人に混じって戦う

  Keymerの主戦場は、スイス式のオープン大会とドイツ国内最高峰のリーグ戦、ブンデスリーガです。

  オープン大会では、一般のプレーヤーとして大会にエントリーします。参加者は年齢も棋力も様々。時には2600後半~2700のレーティングを持つ強豪GMと公式戦で戦うこともあります。2018年にKeymerが参加した大会の中では、Gibraltar MastersとIsle of Manが特にハイレベルでしたね。

  ブンデスリーガは、世界でもトップレベルのリーグ戦です。KeymerはSF Deizisauの主力選手の一人としてプレーしています。

 

3.賞金を貰う

  昨年のKeymerの実績の中で、最も際立っているのがGRENKE Openでの優勝です。最終ラウンドでは、黒番でハンガリー最強のプレーヤーであるGM Richard Rapportに勝利を収めました。

  この優勝により、Keymerは賞金15,000ユーロと翌年開催されるスーパートーナメント、GRENKE Chess Classic*2への出場権を獲得しました。

 

4.コーチ

  Keymerは世界選手権タイトルマッチ出場経験を持つトッププレーヤー、GM Peter Lekoの指導を受けています。Lekoとの縁はブンデスリーガでの同じチームで戦ったところから始まり、世界ジュニア前の短期指導を経て継続的関係になったのだそうです。*3

  インタビューに応じるLeko&Keymer師弟の映像です。

www.youtube.com

5.スポンサー

  コーチを雇う費用や遠征費を賄うため、KeymerはGRENKE社から金銭的支援を受けています。*4GRENKE社はGRENKE Chess Classicと併催のオープン大会を主催している企業でもあります。

 胸にGRENKE社のロゴが入っていますね。

 

6.GMノーム

  他の多くのプレーヤーと同様に、Keymerもグランドマスターの称号獲得を目指しています。GM称号を獲得するには、大会で一定レベル以上の成績を収めて「GMノーム」を3つ獲得する必要があります。

  2018年のKeymerは、優勝したGRENKE Openとデンマークで開かれたXtracon Openでノームを獲得。あとノーム一つでGMというところまで漕ぎつけています。

 

7.将来

  Keymerは2019年も順調に実績を積み上げており、2019年8月期のレーティングは2513となっています。自力で出場権を勝ち取ったGRENKE Chess Classicでは、世界的プレーヤーのAronianとSvidlerに引き分け、ドイツの先輩GM Meierに勝利を収めました。遅くとも10代のうちにGMを取るでしょう。

  競技チェスが盛んで、チェス大国のロシアに次ぐFIDE称号保有者数を誇るドイツですが、Naidistch*5アゼルバイジャンに転籍してのち、レート2700を超える世界レベルのトッププレーヤーいません。

   Keymerにはドイツを代表して世界と戦う、そんなトッププレーヤーへの成長が期待されています。

*1:

https://www.forbesdach.com/artikel/kleiner-grosser-meister.html

 

*2:毎年ドイツで開催され、世界トップ10クラスのプレーヤーが参加する

*3:

https://en.chessbase.com/post/with-peter-everything-is-great-fun-an-interview-with-vincent-keymer

*4:

https://en.chessbase.com/post/with-peter-everything-is-great-fun-an-interview-with-vincent-keymer

*5:ドイツ生まれではなく、ラトビアからの転籍プレーヤー。なお、現在ドイツ国内1位のNiipeanuも生まれはルーマニアの転籍プレーヤー。