チェスの「プロ棋士」その1 チェスにプロ/アマの垣根はない、というお話

  囲碁や将棋に比べてあまり語られることのないチェスの「プロ棋士」の話をしていきます。

 

1.チェスに「プロ資格」はない

  囲碁や将棋には「プロ資格」があります。囲碁では日本棋院関西棋院が、将棋では日本将棋連盟がプレーヤーに「プロ棋士」資格を付与します。「プロ棋士」資格を得ると、それぞれ棋士たちは「棋院」や「連盟」に所属し、所属組織から与えられる試合(対局)をこなして報酬(対局料)を受け取ることになります。

  一方、チェスに「プロ資格」はありません。どんなにチェスの能力に秀ででいても、何らかの組織、団体から「あなたはプロチェス選手です」と認定を受けることはありません。

 

2.え、でも「グランドマスター」とか「インターナショナル・マスター」ってあるじゃん?

  確かに国際チェス連盟はレーティングや競技会の成績に基づいて「グランドマスター」や「インターナショナル・マスター」といったタイトル(称号)を認定しています。

  しかし、これらの称号を得ることと、チェスを職業とし「プロ」として生きていくことはまた別の話です。国際チェス連盟(FIDE)は「プロ棋戦運営団体」ではなく、すべてのレベルのチェス競技を管轄する、競技全体の統括団体です。称号はプロやアマという立場を問わず、すべての競技者の競技力や競技成績に基づいて付与されるものなのです。

  「グランドマスター」のような称号は、プレーヤーが高い棋力を持っていることの証であり、チェスで稼いで生きていくための金看板となります。その金看板を使うかどうかはプレーヤー次第です。称号を取得しても「プロ」になることを選ばないマスターも多くいます。 

3.プロアマ戦は日常

  「プロ」と「アマ」の境界がはっきりしていないため、「プロ棋戦」「アマ棋戦」という枠もありません。

  プロもアマも、マスターもそうでないプレーヤーも同じ競技会にエントリーし、単なる一プレーヤーとして競技会を戦います。スイス式オープン大会の初戦では、「プロ」としてチェスで生きているマスターと、レートにして400、500以上の差があるアマチュアプレーヤーが戦うことも珍しくありません。

   しいて言えば、世界トップレベルの強豪だけが招待される「スーパートーナメント」と呼ばれる大会は囲碁や将棋の「プロ棋戦」に近いかもしれませんね。そのレベルまで到達する「アマチュア」は殆どいないので……。

 

4.プロもアマも同じ物差しで評価される

  チェスには、FIDE公式戦を戦う全てのプレーヤーを対象としたレーティングがあります。職業や棋力を問わず、FIDEの公式戦を一定数以上こなせば「FIDEレーティング」が与えられます。初めてレーティングのついたアマチュアも、プロとして生きていくグランドマスターも、世界チャンピオンのCarlsenも、一人のプレーヤーとして同じ物差しで評価されます。

  「グランドマスター」や「インターナショナル・マスター」といった称号は終身のものですが、レーティングは変動します。GMでも、公式戦に出て負ければ情け容赦なくレーティングが下がっていきます。

5.結局のところ、「チェスのプロ」って何よ

   棋力や称号に関わらず、チェスを通じてお金を稼いで生計を立てている人が「チェスのプロ」ということになりそうです。

  「具体的にどうやって稼いでるの?」という話は、単なる一ファンには見えにくいところではありますが、次の機会にわかる範囲で書いてみる予定です。