第43回チェス・オリンピアード・バトゥミ大会開幕直前……ってそもそもチェス・オリンピアードってどんな大会?

  チェス界は2年に一度のチェスの祭典、チェス・オリンピアード開催を控え、大いに盛り上がっています!
  ですが、チェス勢以外の方々はそもそもチェス・オリンピアードがどのような大会かご存じないと思います。そんなわけで、「チェス・オリンピアード」そのものについて説明していきたいと思います。

1.チェスのオリンピック

  チェス・オリンピアードは1927年から43回にわたって開催されている歴史ある大会です。*1 国・地域ごとに代表チームを派遣し、チームの順位を競います。今大会は185の国・地域・団体*2というが代表チームを送り込んでいます。なお、男女共通の「オープン」と女子選手のみの「女子」の2セクションに分かれています。  
  オリンピアードは権威も高い大会です。普段は賞金大会を転戦しているトッププロたちが、この大会ばかりは国の代表チームに集まります。
  また、オリンピアードに予選はなく、エントリーすればどんなに弱い国でも出場可能です。強豪ではない国にとっては、世界の一流プレーヤーと同じ大会で競い合う貴重な機会となります。
  長い歴史、権威、幅広い参加層。チェス・オリンピアードは、正にチェスにとってのオリンピックと言えるでしょう。

2.大会方式

2-1.全体

  各代表チームは11ラウンドを戦います。各ラウンドでは2チームが対戦し、勝ったチームに2ポイントが、引き分けると両チームに1ポイントが与えられます。全ラウンドを終えた時点で、合計ポイントの最も多いチームが優勝です。
  組み合わせは普段のチェス大会でもよく用いられる「スイス式」によって決定されます。

2-2.ラウンドごと

  対戦するチームから各々4人の選手が選ばれ、4つのゲームが行われます。各ゲームごとに勝ち1ポイント、引き分け0.5ポイントが与えられ、合計ポイントの多いチームがそのラウンドの勝者となります。同ポイントの場合は、そのラウンドは引き分けとなります。

3.代表チームとボード順

3-1.選手選び

  各ラウンドに出場する選手は4人ですが、それぞれの代表チームは基本的に5人で編成されています。ですので、ラウンドごとに1人は試合をしない選手が出ることになります。選手の選び方はチームに任されており、格下との対戦に際してエースを恩存したり、後述する個人賞のかかった選手を優先したりします。

3-2.ボード順位

  各選手には代表チーム内での「ボード順位」が与えられています。バトゥミの日本代表だとこんな感じですね。

順位 選手名 レーティング
1 小島慎也 2408
2 南條遼介 2324
3 山田弘平 2128
4 松尾朋彦 2170
5 大多和優斗 2161

概ね、各チームとも強いプレーヤー、レーティングの高いプレーヤーが上のボード順位になっています。最も順位の高い「1番ボード」を務めるのは、その国一番のプレーヤーの証とも言えるでしょう。
ただし、日本代表を見てもわかるように必ずしもレート順に並ぶわけではありません。決め方は各チームの事情や考え方次第です。

3-3.ボード順位と対戦カード

  選手に与えられたボード順位によって、各ラウンドの対戦カードが決まってきます。各ラウンドで実施するゲームにも順位が与えられており、出場選手の中でボード順位の高い選手から順に、高い順位のゲームでプレーします。
  ……文章で書いてもわかりにくいと思うので、具体例を挙げて説明していきます。
例えば、日本代表がA国代表と対戦するとしましょう。
  A国代表のメンバーはこんな感じです。

順位 選手名 レーティング
1 Hassan 2650
2 Mohamed 2520
3 Ali 2450
4 Abdulle 2200
5 Amin 2150

  A国がHassanを外し、日本が松尾さんを外した場合、対戦カードはこうなります。

日本 ゲーム順位 A国
小島(日本1B) 1番 Mohamed(A国2B)
南條(日本2B) 2番 Ali(A国3B)
山田(日本3B) 3番. Abdulle(A国4B)
大多和(日本5B) 4番 Amin(A国5B)

  誰を外すかは自由に決められますが、ボードの順位を入れ替えることはできません。例えば「小島さんをAbdulleかAminに当てて確実に1ポイント取りたい」と思っても、1番ボードで登録されている小島さんを下位のゲームで使うことはできません。オリンピアードでは、「オーダーの読み合い」要素はあまりないのです。

4.個人賞と個人称号

  オリンピアードは団体戦ですが、個人にとっても大事な戦いです。

4-1.個人賞

  先ほどボード順位について説明しましたが、各チームの同じ順位の選手ごとに個人の「ボード賞」が設定されています。各国の同じボード順位の選手の中で、パフォーマンス・レーティングという指標の優れた選手上位3名が表彰されます。
  前回大会は60歳を超えるフィリピンのベテランGM Eugenio Torreが3番ボードの第3位となり、注目されました。

4-2.個人称号

  オリンピアードで最低9ゲーム以上を戦い、65%以上(9ゲームの場合、6ポイント以上)を記録すれば、この大会の成績だけで「FIDEマスター」の称号が与えられます。*3前回大会では、日本の山田弘平さんがこの制度を通じてFIDEマスターとなりました。
  称号を持っていないプレーヤーにとっては、この制度を通じたFIDEマスター獲得も大きな目標となります。

5.オリンピアードを観戦しよう!

  例年通りなら、電子チェスボードを通じてすべてのゲームの棋譜が生中継される……はずなのですが、まだわからないですね。少なくとも上位チームの戦いは中継されるはずなので、Chess24なり、Chessbombなり、FollowChessなり、好きなサイトを使えばいいと思います。
  Chess24の中継はこちらです。
オープンセクション
chess24.com
女子セクション
chess24.com


Youtubeでの映像配信はこちらです。
www.youtube.com

今回の開催地はジョージアのバトゥミ。時差の関係で、日本時間20時対局開始と日本人にとっては観戦しやすい時間帯です。大いにチェス・オリンピアード観戦を楽しみましょう!

*1:ナチス・ドイツ統治下で行われたミュンヘン大会、イスラエルでの開催を拒否したチーム中心にリビアで開催された「対抗オリンピアード」など、通算回数にカウントされていない「オリンピアード」もある

*2:例外的に障碍者団体の代表チームも出場する

*3:通常は、FIDEレーティングを2300まで上げることで与えられる