もしサッカーのワールドカップがチェスの大会だったら

開催中のワールドカップ(サッカー)出場国がチェスの代表チームを編成して戦ったらどうなるでしょうか。
国際チェス連盟(FIDE)が発表している世界ランクを元に遊んでいきます。チェス・オリンピアードと同じく各国の代表は5人で編成し、4人対4人のチーム戦で勝敗を決める方式を想定しています。

レート*1は各国トップ10のプレーヤーが保持しているレートの平均です。
レート200差でレート上位者の勝率が76%。個人のレート2500+がグランドマスターGM)レベル、2700+で超一流のGMといった感じです。

グループリーグ

グループA

国名 世界ランク レート
ロシア 1 2742
エジプト 48 2481
ウルグアイ 71 2322
サウジアラビア 151 1876

世界最強のチェス大国、ロシアが1位で抜けるのは確実です。元世界王者Kramnik、史上最年少でGM称号を獲得したKarjakinらチェス界を代表するスターたちが代表入りすることでしょう。2位最有力はアフリカ大陸最強のチェス国家であるエジプト。Bassem AminとAdly Ahmedの2600GMコンビを軸に、2400以上のプレーヤーが揃います。サウジは……。引き分け一つでも金星、という感じの戦いになりそうです。

グループB

国名 世界ランク レート
スペイン 15 2615
イラン 28 2542
ポルトガル 61 2409
ロッコ 66 2358

レート通りなら2700GMのVallejo Ponsらを擁するスペインが順当に1位で抜けてくるところですが、侮れないのが近年若手が伸びて急激に力を付けたイラン。17歳にしてレート2638を誇るMaghsoodloo、2年前12歳でイラン国内選手権を制して注目された15歳のFirouzjaなど、若く勢いのあるプレーヤーが揃っています。調子が良ければスペインを食うこともあるかもしれません。勝ち抜けはスペイン、イランの二か国が有力で、ポルトガルロッコは格上相手にどこまで戦えるか試す場になりそうです。


グループC

国名 世界ランク レート
フランス 8 2647
ペルー 29 2540
デンマーク 33 2527
オーストラリア 45 2489

比較的4チームの力が接近したグループですが、世界有数の強豪である伝統国フランスが1位突破最有力。世界でも指折りの攻撃的プレーヤー、Vachier-Lagraveを中心とするチームは非常に強力です。世界シニアで優勝したJulio Grandaら2600GMを3人抱えるペルーはフランスを脅かす存在。デンマークも2位争いには絡んできそうです。オーストラリアはグループ内のレート最下位ですが、有望ジュニアのSmirnovら2500台のプレーヤーも複数いることですし、デンマーク、ペルーに対しては勝ちを狙っていきたいところです。

グループD

国名 世界ランク レート
クロアチア 17 2586
アルゼンチン 24 2559
アイスランド 37 2508
ナイジェリア 87 2252

かつての強国、旧ユーゴスラビアの流れをくむクロアチアがこのグループのレート1位。アルゼンチンも南米第一位の国として存在感を見せます。小国アイスランドはチェスが盛んな国で、人口比で最もGMの数が多い国として知られています。クロアチア、アルゼンチンを軸にアイスランドを含めた3ヵ国が予選突破の2枠を争う形になりそうです。ナイジェリアは、サハラ以南アフリカの中では強国なのですが、このグループでは厳しい戦いが予想されます。

グループE

国名 世界ランク レート
セルビア 19 2572
ブラジル 27 2553
スイス 39 2502
コスタリカ 74 2311

セルビアクロアチア同様、旧ユーゴスラビアの遺産を引き継ぐ強国です。ブラジルはアルゼンチンに次ぐ南米第2位の国。この2か国にスイスがどう絡んでいくかというところです。

グループF

国名 世界ランク レート
ドイツ 14 2617
スウェーデン 30 2538
メキシコ 56 2428
韓国 107 2145

何もなければドイツスウェーデンの2ヵ国が抜けてくるでしょう。ドイツは競技チェスが盛んで、インターナショナル・マスター(IM)称号の保持者はあのロシアに次ぐ265人、その他称号*2保持者はなんと1307人。層の厚さが強豪プレーヤーを育んできました。スウェーデンは個性的なプレースタイルを持つGM Grandeliusがチームを引っ張ります。韓国は最近若い2200台のプレーヤーが出てきて上昇の兆しは見えますが、今現在の力では苦しい戦いになりそうです。

グループG

国名 世界ランク レート
イングランド 12 2633
ベルギー 43 2493
チュニジア 77 2303
パナマ 96 2226

かつて世界の頂点に肉薄したAdamsら、有力GMを擁する伝統国イングランドが1位突破しそう。トップ10のうち9人が30代以降と若手が伸びてきていない感はなくもないですが、兎にも角にも今現在はバリバリの強国です。2位は順当にベルギーでしょうか。チュニジアパナマは番狂わせを狙う立ち位置です。

グループH

国名 世界ランク レート
ポーランド 9 2640
コロンビア 50 2457
日本 93 2232
セネガル 153 1834

研究家のWojtaszek、ジュニア世界1位のDudaの2人を軸に2600+のGMを多数抱えるポーランドの1位突破はほぼ確実だと思われます。2位はコロンビアになりそうですが、日本ジャイアントキリングも見てみたいですね。セネガルは出場32チーム中、レーティング最下位。0.5ポイントでも多く削りたいところです。

サッカーのワールドカップに出場していないチェス強豪国

  まず中国、インドのアジア二強がいないのは寂しいですね。あとは前回チェス・オリンピアードで優勝したアメリカ。ウクライナアルメニアアゼルバイジャンなど強豪ひしめく旧ソ連勢も2018年のサッカーワールドカップには縁のない国が多かったようです。オランダはサッカーでも強国のイメージがあったのですが、今回は出場していないんですね。

チェスのワールドカップとチェス・オリンピアード

  実はチェスにも「ワールドカップ」というイベントがありまして、世界のトップ選手と各地域の代表を集めた勝ち抜き戦が実施されています。開催は2年に一度で、この大会で好成績を収めると世界王者への挑戦者を決める「Candidates Tournament」の出場権が与えられます。前回ワールドカップではアルメニアGM Aronianが優勝しました。
  チェスで各国の代表が集まる団体戦といえば、今年ジョージアのバトゥミで開かれるチェス・オリンピアード。こちらも開催は2年に一度で、世界中から1000人以上の選手が参加します。強豪国同士の優勝争いに注目が集まりますが、日本代表の活躍にも番狂わせを起こしてほしいですね。

*1:過去の勝敗に基づいて算出されるEloレーティング

*2:羽生さんも持っているFIDEマスターなど