Candidates 2018(チェス世界選手権挑戦者決定大会)開催中!

  世界王者Magnus Carlsenに挑戦するプレーヤーを決定するCandidates Tournamentが開かれています。
  3月10日に開幕、28日まで続きます。
主催者の公式サイト
FIDE World Chess

概要

大会名 FIDE Candidates Tournament 2018
開催地 ドイツ・ベルリン
賞金 優勝賞金9万5000ユーロ、賞金総額42万ユーロ
方式 2回戦総当たり14ラウンド

参加者リスト

名前 所属連盟 FIDEレート 出場資格
Shakhriyar Mamedyarov アゼルバイジャン 2814 FIDE GP 2017獲得ポイント1位
Vladimir Kramnik ロシア 2800 主催者推薦
Wesley So アメリカ 2799 2017年平均レーティング2位*1
Levon Aronian アルメニア 2797 2017 Chess World Cup 優勝
Fabiano Caruana アメリカ 2784 2017年平均レーティング1位
Ding Liren 中国 2769 2017 Chess World Cup準優勝
Alexander Grischuk ロシア 2767 FIDE GP 2017獲得ポイント2位
Sergey Karjakin ロシア 2763 前回世界選手権タイトルマッチ敗者

公式サイトで無料の棋譜配信が実施される予定です。また、主催のWorld Chess(Agon社)は前回大会で棋譜中継の独占を試みましたが、今大会については5分遅延させるという条件付きで主催者以外が行う棋譜中継を認める旨、発表しています。

注目ポイント

1.三週間ぶっ通しのA級順位戦

  チェス界唯一の「タイトル」である世界王者。Candidatesはその世界王者への挑戦者を決定する大会です。将棋界で言えば最高峰のタイトル「名人」への挑戦者を決めるA級順位戦に相当するレベル、格式を持つ大会といっても過言ではないでしょう。しかも、2回戦総当たりの短期集中開催。大会期間中は毎日がA級順位戦開催日のようなものです。チェス界にとっては一大イベントなのです。

2.出場者

2-1.前回挑戦者Sergey Karjakin
  2016年のタイトルマッチで善戦し、一時は王者Carlsenからリードを奪っていた挑戦者Karjakin。前回敗者枠での出場となりましたが、今回はなんと出場者中レーティング最下位です。しかし、前回2016年大会も下馬評を覆して挑戦権を奪ったのがKarjakin。今回も虎視眈々と番狂わせを狙っていることでしょう。*2

2-2.5度目の正直なるか、Levon Aronian
  Aronianは4大会でCandidates出場を果たしていますが、いずれもタイトルマッチ出場は果たせませんでした。昨年はGRENKE、Norway ChessとCarlsenも参加する招待制大会で2つ優勝すると、World Cupも初制覇。今年はGibraltarで優勝する幸先のいいスタートを切り、好調を維持しているように見受けられます。今回こそ、挑戦者に名乗りを上げたいところです。

2-3.中国初のCandidates出場者、Ding Liren
  近年急速に力を伸ばし、多くのGMを擁するようになった中国。2014年には国別の団体戦チェス・オリンピアードで初優勝を飾り、トップ選手10人の平均レートで示されるFIDEの国別ランキングではロシアに次ぐ第2位とチェス強国としての地位を確固たるものにしてきました。しかし、個人でCandidatesへの出場権を勝ち取ったのは今回のDing Lirenが初めてです。1957年の第1回チェス中国選手権から60年、Dingは中国チェス界にさらなる「初めて」をもたらすことはできるでしょうか。

2-4.ベテランKramnik
  参加者中最年長は43歳の元世界王者、Vladimir Kramnik。主催者推薦での出場とはなりましたが、2月期のFIDEレーティングでは世界ランク3位と堂々たる力を誇示しています。ShirovやLekoら、かつてのライバルたちが徐々に競技のトップレベルから後退していく中、この位置で戦い続けるKramnikの敢闘を期待したいところです。

2-5.記録男Wesley So
 フィリピン出身で、現在は米国籍で戦うGM Wesley So。昨年途中まで67戦連続無敗記録を続け、話題になりました。2017年後半はSinquefield Cupで最下位タイに終わるなどやや調子を落としていた感もありますが、それでも実力者ということに変わりはありません。

2-6.記録を止めた男、Mamedyarov
  Wesley Soの無敗記録を止めたのがアゼルバイジャンGM Mamedyarov。昨年後半に調子を上げ、「若者のゲーム」とも言われるチェスの世界で32歳にしてレーティングの自己最高記録を更新。世界ランク2位まで上り詰めました。愛称の「Shak」から「Shak Attack」と呼ばれることもある攻撃的なプレースタイルでファンを楽しませてくれることと思います。

2-7.長考するGrischuk
  ロシアから参加するAlexandr Grischukは序盤から積極的に時間を使っていくことで知られます。時間切迫に陥ることもしばしばですが、Grischukはこのスタイルで結果を残してきました。Grischukの時間切迫癖について、元世界チャンピオンGM Anandは「僕は残り時間が5分になったらナーバスになり始めるけど、Grischukの時間切迫は残り5秒からだ」と評しています。*3持ち時間が少なくなっても動揺しない強い精神力がGrischukを支えているのでしょう。

2-8.前回の雪辱を期すCaruana
  Caruanaは二度目のCandidatesです。前回大会は挑戦権獲得の可能性を残して最終ラウンドを迎えましたが、勝ちぬくには不利な黒番での勝ちが必要でした。Caruanaは鋭い序盤を選択し、勝ちを目指して積極的にプレーしましたが、敗れて挑戦権は取れませんでした。今回は前回大会の「忘れ物」を取り返したいところです。

3.会場

  会場はベルリン市内のKühlhausという建物。19世紀末に冷凍庫として建設され、現在はイベント会場として利用されています。
対局場は各ボードごとに区切りをつくる独特の構造になっています。


観客は二階から覗き込むように観戦します。

*1:FIDE GPあるいはChess World Cupに参加し、他の要件で出場資格を獲得していないプレーヤーの中での順位です。参加資格の優先順位は1.前回タイトルマッチの敗者、2.Chess World Cup上位2名、3.FIDE GP上位2名、4.平均レーティング、5.主催者推薦となっています。

*2:というか、2700後半のレートを持っていればこの面子相手に良い戦いをしても不思議ではないですし……

*3:2009年のインタビュー Anand: Every year I keep my fingers crossed | ChessBase